独歩の独り世界・旅世界

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四国お遍路 第2弾 4,足摺岬はバスで、37番~39番、、

 もうひとつの土佐の難所は足摺岬だった。その朝、6時からの勤行と法話のあと朝食をいただいてから、今一度本堂と大師堂を参拝し、勤行と法話をしてくださった住職自らが筆を取ってくれ、ご朱印をいただいて出発しようとしたとき、すでに昨日の仲間の姿はなかった。朝食時は顔を合わせていたが、彼らはそのあとすぐに旅立ったようだった。なにしろその37番岩本寺のあった窪川から次の38番金剛福寺のある足摺岬までの道程は80kmを越え、歩きだったら普通でも3日、わたしなら4日の行程であった。いうまでもなく、この四国88ヶ所巡礼の札所間距離としては徳島県の23番薬王寺から高知県室戸岬にある24番最御崎寺までの75.4kmを抜いての最長距離であったのだ。

岩本寺;4枚、上から朝の勤行が行われた本堂とその内部(2枚)Img_1379_640x480Img_1381_640x480Img_1382_640x480Img_1384_640x480本堂と鐘楼


 もちろん、すでに第一回目の遍路で、当初抱いた歩いて廻るという大志はあっけなく崩れ去っていたから、その間を歩くつもりはなかったし、そもそも歩ける自信も歩こうという気力も今回は最初から持ち合わせてなかった。この時点ですでに昨日来の仲間とは距離を置かれていたのだった(負けていたということ)。わたしは一人で駅に向かい、中村までの土佐くろしお鉄道は8:27まで列車がないのはわかっていたが、そこで3,40分、駅の待合室でボケーと待つしかなかった。一両編成の列車(電車?)は8:22ころ到着し、わずかな乗客を乗せて中村に折り返した。比較的新しい(?)この鉄道は途中から左手に太平洋の海原の眺めがよく、観光鉄道的な趣もあったが、同時にトンネルの多い路線でもあった。乗客が少ないから一両編成(?)のワンマンカーであったが果たして採算はいかに?ま、いまや過疎地の列車やバスの運行・運営は厳しい課題を突きつけられているのではないかと、どこでも余計な心配をしてしまう。だからこの間の料金1090円も仕方のないところだったが、この第三セクター土佐くろしお鉄道も例のフリー切符で乗れたのだからありがたい話であった。しかし流石に中村から足摺岬までのバスはその限りではなかった。中村着9:24、そこで足摺岬までのバス10:14まで、また1時間近く待つことになった。

窪川駅;2枚Img_1391_640x480Img_1390_640x480

土佐くろしお鉄道の車窓から;2枚(窓越しなので写りいまいちなのだが、歩き遍路はこの道を延々と歩き続けるのである)Img_1393_640x480Img_1395_640x480

土佐くろしお鉄道の本社がある中村駅Img_1400_640x480


 そのバスは一日7便(平日)あって、ありがたいことに中村~足摺岬間35km、歩くと二日の行程を1時間45分で運んでくれるのだから1900円は決して高いとは思わなかった。それでもこのあたりの感覚は難しいところで、いわゆる普通の価値観で判断できることではないから、安易な手段の選択に抵抗がなくもないのだ。土佐清水から車一台が通るのがやっとの足摺の海岸線を、南国の太陽にきらめく海原を眺めながら行くバス旅は、それでなければ観光気分を満喫できる風光明媚な車窓であったのだけれど、それほど心安きものでもなかった。ましてや、その車窓にひとたび歩き遍路の姿が飛び込んでこようものなら、のうのうとただ座っているだけの己の心はまったく穏やかなものではなくなる。現にその道を歩いているお遍路さんを何人見たことか?、いや、ただただ、ご無事で ! 頑張れ ! と心の中で叫ぶのが精一杯であった‥、、

 そのときもまだ足の痛みが残っていたから、土佐くろしお鉄道中村駅で、一時間ほどの余裕があったが特に街をぶらつくこともなく、駅前のベンチでバスを待ち、定刻にやってきたバスに乗車したのは観光客らしい女性が二人とわたしの三人きりだった(この三人は帰りも同じバスになり、この三人だけが始点<中村駅>から終点<足摺岬>を往復した。が、それぞれがわが道を行くという感じで、お遍路さんでもなかったので特に話をすることもなかった)。途中から地元の人、特に病院通いか、それに類する施設に通うお年寄りが数人乗り降りした程度で、行きも帰りもこのバスの乗客は最大10人を越えることはなかった。12時に足摺岬灯台近く、それは同時に38番金剛福寺の近くでもあったが、バスはそこが終点と告げられたところに着いた。そこからはそれほどのんびりしてはいられなかった。38番の参拝と、せっかく来たのだから足摺の灯台は見ておきたいとの思いがあったのだが、その時間は一時間少々しかなかった。乗ってきたバスの折り返し時間が13:12であったからだ。その次のバスは1時間半後にあったが、その時点で(正確には前日中に)わたしはそのあとの時間まで調べてあって、もし13:12のバスで戻れば、中村から平田まで土佐くろしお鉄道で行って39番延光寺がぎりぎり打てそうだったこと、そしてそれを見越して、その夜の宿を宿毛にとってあって、前夜宿坊からtelで予約を入れてあったのだった。なので13:12のバスを逃すわけにはいかなかったのである。足摺岬での一時間はそういうことでけっこう忙しかった。もちろん真っ先に金剛福寺を打って、それから灯台に向かった。途中天狗の鼻へ行くわき道があって、まずそこへいって、岬の上に立つ灯台の写真を撮る。それから戻って展望台、そして灯台の基部へ、そこから白川洞門(侵食によってつくられた洞穴?トンネル?)へ続く遊歩道をいくとこれが案外道のりがあってどんどん時間はなくなっていった。しかも防風林(松林?)の中の遊歩道に人影はなく、戻れるかどうか心配になってきたので、白川洞門に着く手前でいったん国道に出た。そして先のバスを降りたところに戻っていたら、時間が足りなくなるかもしれないと思って、その手前のホテルが立ち並ぶ足摺岬の中心街のようなところにあったバス停に向かった。その途中に実は白川洞門はあって、その近くにまで行く時間はなかったが写真だけおさめることができ、バスにもギリギリ間にあったのだった。しかし前日のごとく、どこか素敵な場所で昼食を、という思いは叶えられず、その朝窪川駅ののキオスクで買っておいたおにぎりは帰りのバスの中の一番後ろの席でほおばるしかなかった。

バスの車窓から;4枚

Img_1403_640x480中村の街を流れるかの有名な四万十川Img_1405_640x480佐清水港付近Img_1406_640x480ジョン万次郎の生家のある中の浜の集落Img_1433_640x480足摺岬西岸の海

38番金剛福寺;5枚Img_1408_640x480Img_1409_640x480Img_1411_640x480Img_1414_640x480
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灯台手前の広場に立つ中浜万次郎Img_1418_480x640

足摺岬灯台;2枚(天狗の鼻から)Img_1419_480x640Img_1423_640x480

灯台と白川洞門
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 そのバスの中村着は14:57、次の宿毛行きの電車(列車?)は15:37だった。39番延光寺のある平田という駅には15:58着、そこからはガイドブック(へんろ道保存協力会編の地図)では2.5km、3~40分というところであった。道も比較的わかりやすかったが、一度確認に地元の人に聞くと、親切に方向と目印を教えてくれ、畑の中を行く感じで少し頑張って16:30に延光寺に着いた。ここでも団体さんの後塵を拝することになったが、参拝を終えなんとかご朱印をいただいたのが16:50、まさにギリギリであった。次の宿毛行きは17:52だったから、今度はのんびり駅まで戻る。誰もいないホームのベンチで前回世話になった友人T氏にC-mailを入れて、今夜は宿毛に泊まるが、今回は四万十・宇和海フリー切符を持っていて、明日は宇和島、松山を素通りして今治まで行ってしまうつもりなので、今回は寄れずに申し訳ないと、詫びを入れた。すぐに折り返しのtelが入ったので、もう少し詳しくこれまでの経緯を説明し、いずれにしろ今回でもすべて終わらないから、また来るのでそのときはよろしくと伝え、再会を約束した。平田から宿毛までは駅二つ、18:02に宿毛駅に降り立った。

中村駅アンパンマン列車?Img_1434_640x480

地元の人が教えてくれた目印はこの大きな看板だった、、Img_1439_640x480

39番延光寺;3枚Img_1435_640x480Img_1437_640x480Img_1438_640x480


 前夜、岩本寺の宿坊で夕食後、宿毛のホテル探しに頭をかかえていた。やはり宿毛といえば高知県の外れにある街で、リアス式海岸の天然の良港として知られ、土佐くろしお鉄道の終着駅でもあったから、けっこう大きな街を想像していた。少なくとも例のガイドブックを見るかぎりでは宿の数は10を越えていたから、迷うのは当然であった。が、よく見ると実際の宿泊施設はひとつ手前の駅東宿毛のほうに多くあったので、もしかしたら街の中心はそっちだったのかもしれない。そんなことは知らず(今も)わたしは次の基準でホテルを絞った。①次の朝そこからバスに乗る予定だったから、できるだけ宿毛駅に近いこと、②はこれまでの経験からどちらかというとビジネスホテルのほうが好ましく思えていたこと(これは意外なことだが、お遍路当初は逆で旅館・民宿のほうが好みだった)、③電話で料金を確認し、2食付で7000円以下であればOKする、というものであった。その基準に当てはまりそうなところを見つけtelを入れると、一発ですべてをクリアしたのでこの宿探しはそれほど大変ではなかった。が、宿毛に着いたときすでに日は暮れており、思ったほどの繁華街もなく、方向もどっちかわからない状態で、あてずっぽでホテルらしい建物がないかと歩き始める。ま、いい按配にカンは当たって方向も道も間違わずにホテルにたどり着けたが、7~8分はかかったか?つまりそれほど駅そばではなかったのであった。ま、それでも7~8分は十分駅近だったし、何より小奇麗なビジネスホテルだったことと併設されているレストランに宿泊客以外の地元の人らしき客が多く来店していたことが好印象を与えた。風呂を浴びて、そのレストランで夕食をいただいたが、朝・夕食つき6500円なら申し分のない内容だった。さらにわたしを喜ばせたことは、メニュウを見てビールを頼もうとして、それはどこも同じような値段だったが、そのレストランに入る前にホテル内の自販機で発泡酒の500mlが270円という手ごろな価格で売られているのを見ていた。わたしはそのレストランの感じのよいウェイトレスに図々しく、あの缶ビールを持ち込んでいいか、と聞いてみたのだが、あっさりOKがでたのである。こんなことがわたしを上機嫌にさせるのだ。よって、それだけのことでわたしはこのホテルをアタリと判定したのであった。ま、褒めているのだから名前を公表してもいいかもしれない。宿毛のそのホテルはたしかホテルマツヤといったはずだった‥、、

意見の分かれるところかもしれないが、わたしはビジネスホテルで2食付6500円ならOKをだす、、Img_1441_640x480

次の朝屋上から駅方面と反対側の海方向を写すImg_1443_640x480Img_1442_640x480