独歩の独り世界・旅世界

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アメリカ・メキシコ・キューバの旅 32)最悪の国境越え

 よく憶えていないがこの日の朝食はカップヌードルを食べている、どこで買って食べたのだろう、それから歩いて国境のバス停へ(バス停で食べたのかもしれない)、さてそこでバス情報を聞く、その場からLA行きのバスもあったが、国境を渡ってから乗れば3ドル安いという、ものごと歯車が狂いだすとどうすることもできなくなることがある、たまたまケチった3ドルのためにことは最悪の状態に陥る、8時には歩いて国境を渡る、その時誰かと一緒だった、何故その人といっとょだったかは不明でイミグレの手前で別れ、わたしはパスポートを探す、そして国境をわたる人の列に混じる、これまでにもこうして陸路で国境を渡ったことは世界中で数多く経験していることだったが、このとき初めて黒人女に尋問されてしょっ引かれてしまった、ほとんど形式的なパスポートの提示だけでスムースに通過していく人々から丸見えのところでたぶん見せしめ的意味合いでわたしの荷物はひとつ残らず開陳させられた、まったく理由がわからなかったがこういう場での反抗的態度は却って事を大きくするだけなのでわたしは黒人女の言うままに従った、彼女は明らかにわたしを疑ってかかっていた、ま、相手の立場からすれば職業的カン?もしかしたらイミグレ手前で立ち止まってわたしがパスポートを捜していたのを見ていたのかもしれない、そしてそれを挙動不審とにらんだ可能性がある、もちろんわたしは非合法のものはもっていなかったから逆に徹底的に調べられたのだ、何も出てこない、あるはずだと彼女は思ったのかもしれない、もちろん彼女にはその権限があるのだから、10分で通過する国境でわたしは2時間も結局立ち往生を食らった、初めての経験だった、たまたま持っていたキューバのシガーを苦々しく眺め昨日買った果物は没収されたけれど彼女のカンははずれだった、2時間後に開放されたけれどしばらく呆然としていた、精神的ショックが大きすぎた、ある一抹の恐怖さえ感じた、そして怒りがこみ上げてきた、しかしその怒りの対象はどこにあるのかよくわからなかった、天罰というか魔がさしたというかタイミング(運)が悪かったというか、ま、こういうことは時々起こるものとして諦めるしかなかった、しかし悔しかったのはせっかくそれまで1ケ月以上にわたって(幸運だったからか?)いい旅を続けてきて最後の最後にきてのどんでん返しはわたしに相当なショックを与える出来事であった、あとから思えば3ドルケチらずにバスに乗っていればとか、何でシティからLAまで飛ばなかったのかとか、いろいろ反省材料はないことはなかったのだが、すべては結果論、世の中一寸先は闇で何が起こるかはわからないという好事例だったかもしれない(好事魔多し?)、すべて調べつくしてその黒人女は消えた、わたしはすべての荷物をつめなおしてアメリカに入国しLA行きのバスに乗った、LA着13時、その昔そのときから30年前にこのLAロスアンゼルスには半年間住んでいた、当時はまだ地下鉄もなかったし、もう記憶もあいまいですっかり様相も変わっていたがダウンタウンを少し歩いてFlower St.に安宿を見つける、安宿といってもメキシコの4倍の値段である、でも37ドルだったから安いほうだと思う、立地も悪くない、ホテルに荷を置き久しぶりのLAを地下鉄とバスを使って市内見物、夕食はYoshino-yaで久しぶりの日本食にありついた、長かった旅も明日で終わる