独歩の独り世界・旅世界

他のサイトに書いていた'独歩の独り世界・旅世界'を移転しました

5回目の区切りうち遍路 その3, すだち館~13番大日寺~17番井戸寺

 どうもこの日辺りからスケジュールが狂いだしていた。当初の想定では、この12番焼山寺~13番大日寺も距離が長くて20.8km,6時間となっていたから、あまり長い歩きに自信を持ってなかったわたしは、その日はこの13番大日寺まで行くのが精一杯ではないかと思っていた。で、13番大日寺の周りには遍路宿がいくつかあって、当の大日寺にも宿坊があったから、どこに宿をとろうか迷っていて、宿は決めてなかった。ま、これだけ宿があれば当日でもなんとかなるだろうとの想いがあってのことだったが、それでもお勧めがあればと前日の夕食の時に先達のT氏に聞いてみた。そしたら意外なことをいわれたのだ、、わたしの足なら17番までいけるだろう、普通はここ(すだち館)からなら早い人は徳島市内までいってしまう、市内には多くの宿があり、ビジネスホテルもあり善根宿もある、もしそこまでいけなくとも17番井戸寺の門前に民宿おんやど松本屋があるからそこまではいけるだろう、というのであった。ほんとかよ?と半信半疑のまま、それなら余計予約は入れないほうがいいかもしれない、午前中にどの辺までいけるか、それからでも遅くないであろうとその朝出発した時点でも、宿は決めてなかったのだった。

 すだち館から100mほどいったあたりに、オカアサンが教えてくれた左に入る山道の遍路道があって、最初はそれほどの登りではなく、まず雑木林を抜け民家や田畑の間を15分くらいいったが、遍路道は突然本格的な山道に変わった。その山道はかなりの急なもので、多少の登りでも最初のワンピッチは1時間くらいは歩けるだろうという自負があったのだけれど、どうにも苦しくて45分くらい歩いたところで5分の休みを入れてしまった。悔やしかったのは、あともう少しで峠だったことを再び歩き出して5分後に知ることになったことだった。休憩場所としてははるかに優っていたその峠付近には石碑やお堂があって、休むにはちょうどいい場所だったからだ。その玉が峠でもお賽銭を上げたり写真を撮ったりして少しの休みを入れてから歩きだす。そこからは舗装されてはいたが全く車の通りそうにない車道がずっと下り模様に続いていた。実際その峠がだいたい450mで、はるか下を流れる鮎喰川80mあたりまでずっと下りだったが、その道沿いの側溝の掃除に駆りだされ、総出で作業する村のおばさんたち以外に人にも車にも出会うことがなかった。だからからか?その道はこれまで歩いた四国の中でも飛び切り美しい山岳風景を、ほとんどずっと愛でながら下るという(つまり下りだったからだらだら歩きで)特筆すべきいい道であった。そんな情報も持ってなかったし期待もしてなかっただけに余計その喜びは大きかった。歩くのがとっても楽しく感じられた道ともいえた。そうやってその間は休みなしで歩き続けた。地図によると途中に鏡大師というのが載っていたから、そこまで歩くつもりでいたが、どういうわけかそれを見逃してしまうのである。おかしいな、しかし疲れたなと、ようやく休みを入れたところは、鮎喰川を渡る橋の手前だった。そのときすでに峠から1時間10分歩き続けていたのだった。

ここから玉が峠への山道が始まるImg_3069_640x480

玉が峠;2枚、峠の手前からアスファルト道路になるImg_3073_640x480Img_3071_640x480

わたしのお気に入りのとなった下りの山道からの風景;4枚Img_3075_640x480_2Img_3076_640x480途中にあった遍路のための休憩所Img_3077_640x480Img_3078_640x480

だいぶ下って阿野の村落の近く、鮎喰川とこの後渡る橋が見えてくる、、Img_3079_640x480


 しかし、そこはすでに川沿いの村落になっていて、橋を渡ってしばらくは近道である遍路道を20分くらいいったが、そのあとはずっとその鮎喰川の川沿いを走る20号線を行くことになった。道は平たんになったが、車の量が増え単調な舗道歩きは疲れるばかりだった。1時間くらい歩いてこの辺りの中心?役場のある広野というところでまた少しの休みを入れるべく適当な場所を探す。そのときもっていたへんろみち保存協力会編のガイドブックの地図によるとそのあたりから13番大日寺への道は川の両側どちらの道をいっても変わらないように描かれていたが、ま、それは車用の道でもあったから、歩きとしては少しでも短距離を選択しようとそこで川を渡った。渡った先の道は21号線となって少し道幅も広く交通量も多くなったが、そのあたりでしばしの休憩となった。そこまで、すだち館から10km?, 3時間かかっていてそのときちょうど10時を回ったところだった。このガイドブックのキロ表示がわかりにくく、大日寺まであと何キロかはっきりわからなかったのだが、半分は越えているのは確かそうだった。その時ようやく気付いたことがあった。ガイドブックにあった大日寺まで6時間とあったのは焼山寺からのことで、焼山寺からすだち館まで1時間かかっているのだから、すだち館から大日寺までは5時間ではないか?ということだった。ならばあと2時間、それならばだいぶ前に中間地点は過ぎていたことになる。少し気を取り直してまた歩き始めた、、

遍路道にかかる橋Img_3080_640x480

21号線は道は平坦・単調になったが、鮎喰川の風景はなかなかのものだった、、Img_3082_640x480

 平坦地ではだいたい1時間、4kmくらいのペースで歩けていたと思う。そして50分~1時間歩いて小休止するサイクルもなんとか保てていたと思う。また、このとき新しい靴を履いていたが靴ずれ対策もしていたから、まだ足の痛みはでてなかった。少し疲れはでてきていたとはいえ、この分でいけば12時前に大日寺に到着できそうな期待がでてきた。次の休みを行者野橋付近で入れて、あとは一気に大日寺に詰め寄れるか、時間との戦いとなった。最後は少し頑張ってぎりぎりの11:55に大日寺到着、なんとかコースタイムで着くことができたのだった。そこですだち館を先に発った同宿だった歩き遍路の若い方に会う。すでに参拝を終えていて、昨日話題に上っていた徳島市内の善根宿がとれました、と報告してくれたが、わたしは到底そこまでは行けそうにないから、どうぞ先にいってくださいといって、その場で彼を見送った。他には参拝客がおらず、そのあとゆっくり参拝を済ませ、墨書を書いていただいた女性に境内で昼食をとる許可をもらった。5時間歩いた後だったので、昼食時間を兼ねて少し長い休みをとった。先の若い方もそうしたように、そろそろ宿を決めなければならなかった。それにしても先達T氏がいっていた通りで、ここに12時に着いたことが信じられず、この大日寺、あるいは確かに周辺に何件かの遍路宿があったが、そこに予約しておかなかったのが正解となったようだった。しかし、ではどこに?、すだち館のオカアサンが作ってくれたおにぎりをほおばりながら、ガイドブックをあらためて見直す。その時点で12時半、ま、1時に出発したとしても、確かに17番までは行けそうだった。が、どうやってもそこまでだろう、そうするとT氏がいっていたおんやど松本屋しかなかった。もしあいてれば何ら問題なし、で、すぐにtelを入れる。相手はでてくれたのだけれど、その日はいっぱいだったからではなく、たまたま何かの都合で休ませてもらっていると何度も謝られてしまった。それなら仕方ない、他を探すしかなかった。

大日寺参拝の前に道路を挟んで鎮座する、由緒ある一宮神社を参拝する、、Img_3084_640x480

大日寺;3枚Img_3083_640x480Img_3086_640x480正面本堂は山門を入って左手にあった
Img_3085_640x480大師堂が右手に、、

 頼りになるのはそのガイドブックだけ、なおかつ、どう頑張ってもさっきの若者のように井戸寺から先の徳島市内の宿まで行ける自信はなかったし、体力も残されてなかったから、どうしてもその手前で探すしかなかった。と、それに該当する宿は一件しかなかった。が(そのガイドブックの宿情報は連絡先があっただけで金額的な表示が一切なく)その宿名から察するにその宿はどうも民宿でも遍路宿でもなさそうだった。それでも遍路を断ることはないだろうと、まずtelを入れてみる。空きはあって泊まれるとのこと、で、値段を聞く、7000円プラス消費税はこれまで遍路で泊めていただいた宿の中では、ま、高いほう、しかしそれをいっても始まらなかった、他がなかったのだから、、そこは16番観音寺近くにあったから、観音寺を打ってから、そこに荷を置いて17番にいくにはちょうど良いとも思えた。それでその日の宿をお願いしてから、12:50に大日寺を後にした。13番大日寺~14番常楽寺は2.3km,40分となっていた。鮎喰川を渡る一の宮橋までは人通りの全くない裏道の遍路道をいく。この日はありがたいことに晴天になっていたが、かえってそれが暑いくらいであった。14番には13:20着。境内が平らでなく岩盤がむきだしで、ちょっと変わったお寺、といった印象を持った。そこでは若いお遍路さんや一般の参詣客もあって結構にぎやかな感じだった。参拝・納経に25分かかって、また裏道の舗道を15番国分寺へ。鮎喰川からこっちはもうほとんど市街地となっていて、大通りの裏道といった感じの細い道を0.8km、10分の近さだった。15番国分寺では団体さんと遭遇、、こうなるとまた納経所で待たされてはたまらないと参拝が少し慌ただしくなる。なんとか団体さんより先に御朱印をいただけて、また裏道を16番に向かう。16番観音寺までは2km,30分?途中で大通りの192号線を渡り、学校のわきの細い舗道をしばらく行く。その辺りは広々とした田園風景だったが、だんだん民家が密集してきてちょっとした通りに出ると目の前に観音寺があった。比較的狭い境内は、街中にあったこともあってか結構にぎわっていた。お参りを済ませ、御朱印をいただいたのがちょうど15時ころ。そこから5分のところに、数時間前に予約を入れた‘鱗楼’はあった。思った通り、看板には料理・旅館となっていて、いわゆる遍路宿とは趣を異にして少し敷居が高そうだったが、それでも親切そうな女将さんが優しく迎えてくれた。挨拶もそこそこに、荷物を置かせてもらって17番を打ってきたいことを伝えて巡拝用品だけ持ってすぐに17番に向かう。その時間なら井戸寺往復は楽勝に思えたが、途中のコンビニで喉を潤し、前日(だった?)に列車で通ったJR徳島線の線路を渡って井戸寺までの道のりはずいぶん遠く感じられた。実際3km,45分かかっていたのだから、荷物があったらもっと時間がかかっていたかもしれず、井戸寺に着いたときは疲れ切っていた。この井戸寺の謂れも面白く、由緒のあるお寺と聞いていたが、街中にあって地元の参拝客が絶えない様子に、十分昔の面影を偲ぶことができた。休みを入れた参拝に30分をかけ、来た道を戻る。帰りがてらまたコンビニで、今度はビールを仕入れて宿に戻った。宿に帰り着いたのは17時だったから、この日は、もちろん途中参拝に時間がかかっており、休みも入れてだが、10時間行動していたことになる(歩いたのは25~6km,7時間半というところか?)。お風呂をいただいて、結局この日の宿泊客はわたし一人だったようで、気軽においしい食事をいただく。ビールも一本で足りなくなったが、そんなこともあろうかとコンビニで買ったビールをひそかに隠し持ってきていたので追加はせずに済んだ。十分に疲れて、ビールで満ち足りて、さぞや寝つきはよいかと思ったが、案外疲れすぎて寝付けないこともあるということをこの時知るのだった、、

14番常楽寺;3枚Img_3089_640x480Img_3092_640x480Img_3091_640x480

14番から15番への道沿いにあったお大師様とは関係のない?写真2枚
Img_3093_640x480岩舟地蔵尊
Img_3094_640x480国分寺そばの臨済宗興禅寺

15番国分寺;3枚
Img_3096_640x480Img_3098_640x480Img_3097_640x480

16番観音寺;3枚
Img_3099_640x480Img_3102_640x480Img_3100_640x480

17番井戸寺;4枚
Img_3103_640x480Img_3104_640x480Img_3105_640x480Img_3106_640x480