独歩の独り世界・旅世界

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ダッカからのmail

ダッカにて」

バングラデシュといえば、赤軍派ダッカ事件ジョージ・ハリスンバングラデシュ救済コンサートを思い浮かべる諸兄は、私同様の旧世代人類か?

最近ではグラミン銀行やサイクロンのニュースでバングラデシュの存在を認識するくらいだろうか。たまたま、バングラデシュに仕事で訪ねる機会があったので、雑感記しました。

午前4時過ぎ、コーランの唱導に浅い眠りをさまされる。まだ夜明け前だ。旅もまだ半ばまで来ていないと言うのに、すでに体調を崩し、悪寒と寝汗でひどい夜を過ごす。今日のスケジュールを考えると、うまく1日をやり過ごせるか心配になる。部屋の冷房が低すぎたのに放っておいたのがいけなかったのか。昔はもっとタフな筈だったのに、歳なんだなぁ。

眠り直せないまま、昨日見た街の光景を回想する。モンスーンのスッキリしない空の下、ダッカの旧市街は褐色にくすんでいた。ぼろぼろのバス、その隙間を埋めるように行き交うおびただしい数のリキシャ。例外なく痩せた車夫たち。あっという間に千人以上の人々とすれ違えるほどの雑踏。老若男女、皆がみんなサンダル履きだ。中東ほどのモスリムの厳正さはないのか、スカーフは被るものの、顔を隠した女性はまれだ。女性は総じて小柄だ。太っている人は珍しい。様々な仕事の現場で、人力が主力かのように肉体労働が目に付く。リキシャで人が運ばれ、大八車で物が運ばれる。女、子供がハンマーで石を叩き砕石をつくっている。街角の空地では露天で日常品や農産品が商われている。ガラス製の粗末なランプは、電灯の代わりをつとめるのか。その背後には水溜りや放置されたゴミが散在する。ちょっとした降雨で市の中心部であろうとあちこちの道路で冠水箇所が出現する。夜ともなれば市街地でも停電なのかと思えるほどに暗い。人口1億数千万人の2/3にあたる人たちは1日2食の食事が満足に取れないとか。現地の英字新聞には昨年秋のサイクロン被害地区では食料が欠乏して飢餓の恐れがあると報じていた。同じ新聞には、未就学児童の労働が問題になるのではなく、その子供たちの危険な労働が懸念されていた。懸案の多い。びっくりするほどに貧しい国。この国で近未来に明るい展望をもつのは難儀だと、ため息がでた。

今はやりの地球環境問題に絡めて言えば、ここは地球にやさしい生活を国中でしているエコロジカルな国なのかもしれない。物を持たない生活は地球にやさしい。しかしこの現状に納得している人間はバングラデシュのどこにもいない筈だ。皆、豊かさを渇望している。他方、いわゆる先進国は地球環境を守ろうの大合唱だ。自分達が富を得た手段に対し、後発組には制限を課そうとしているかのようだ。かつての南北問題は形を変え、相も変らぬせめぎ合いを繰り返している。世界はますます混迷の度合いを深めているかのようだ。バングラデシュの問題は一つの理由に結び付けられるほど単純ではないが、これも一つの側面ではあるだろう。

この小文を書くに至った動機は、はじめて見たバングラデシュの圧倒的な貧しさに魂を揺すぶられたからに他なりません。文筆つたないゆえ、意は尽くせませんが、最後に一言、私たちはあまりにも日本の現状に埋没しすぎて、世界の状況に疎くなっていないかという懸念です。だからどうしたと言われれば、それまでですが、自戒をこめて。

先日友人から1通のmailが届いた、重いメッセージだった、ここに承諾なしに再現してしまった ‥