独歩の独り世界・旅世界

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アメリカ・メキシコ・キューバの旅 24)キューバ サンタクララ(Santa Clara)

  この日も町までは結局タクシーを使ってしまった、それくらい郊外にホテルはあったということだ、少々の距離なら歩いているはずだから、そして午前中はまた街をうろついたり絵葉書かって日本に送ったりして時間をつぶす、バスターミナルには出発の2時間前には着いていた、この日もこのバス停に来る間に一人の女性から日本語で声をかけられた、ハバナ大学日本語学科卒だとのこと、メキシコでは経験しなかったことに驚いてしまった、メキシコとキューバは距離は近いがまったく異質な国である、同じスペイン語圏であるが人種はまったく違う、モンゴロイド系のインディオとの混血のメスティーソが7割近くを占めるメキシコに対してキューバはニグロ系との混血が主である、だからあんなに陽気なのかと思うくらい明るくて屈託なくしかも親切だ、その上礼儀正しく寛容で辛抱強いのはただ人種の違いだけではなさそうだ、わたしはそこに偉大な指導者カストロの力とカリスマ性を見逃してはならないと思う、そう彼の政治的選択ゆえアメリカと対立しアメリカの経済封鎖のもと彼らは今経済的貧困にあえいでいる、しかもメキシコ湾の向こう側からのテレビ電波は何の障害もなく入ってくるからいやおうなしに彼らはアメリカの経済力を目の当たりに見せ付けられている、その自らの貧困とやるせなさを決してカストロに向けることはなかった、心の内は不満もあろうかと思うが決して表に出さない、それも統制が怖いからでなくカストロというオヤジを心から信じ敬い指導者として奉じているからだと思う、まそれほどカストロという指導者が偉大だったということでもあろうが、同時にその国民性も優れていたからだと思う、まだ元気な姿を時々見せるカストロがいなくなったとき、キューバは変わる、果たしてよい方向へか悪い方向へか、確信的に言えることはその前にキューバを訪れておくべきだ、ということ、それは前回はじめに書いた経済と心の方程式からも必然的に導き出される‥

 さて、サンタクララへのバスは変わりつつあるキューバのひとつの象徴といえるかもしれない、国営だか民営だか確かめることはできなかったが、おそらくその路線ができて日も浅いのではないかと思われた、なぜならバスが新しいし長距離の移動者あるいはキューバを訪れる旅行者が増えたはじめたがゆえに必要性から生まれたようにも思えた、ほとんど車が走っていない幹線道路をかなりのスピードで飛ばしていく、途中はサトウキビ畑?農場のような耕作地から未開墾の荒野に変わり、途中街らしきところは一箇所もなかった、それでも3時間ばかり走ってちょっとしたドライブイン風のところで休憩、腹をすかしていたがなんとも様子わからず(言葉の問題と金の問題で)なすすべなく、貧乏人のキューバ人よりさらに惨めな思いをしばし味わう、そしてバスは漆黒の大地をひたすら走り19時30分大きな町だがなんとなく暗いサンタクララに到着した

 ここでわたしはこの旅のハイライトというべき感動・感激を体験することになる、即ちバスを降りて、さて紹介された民宿へどうやって行こうかと思った瞬間に**(わたしの名前)さんと日本語で声をかけられたのだ、一瞬わけがわからなかった、何でこんなところにわたしの名前を知っている人がいるんだ、しかも日本語で ! 前にも触れたがわたしはそれまでに数十カ国?・延べ日数で言うと数年に及ぶ旅をしていた、しかしそれまでに旅先でわたしの名前を呼ばれた経験なんて無論なかったから、わが耳を疑ったというのが本当のところである、神の声かとも思ったほどだ、で声のしたほうに振り向いてみるとそこに初老の紳士とそのお嬢さんらしき親子がニコニコしながらわたしを見ていた、え?どういうこと?どなたですか?聞けば今夜わたしが泊まる民宿の親子でわたしを出迎えに来てくれたのだという、そんなことがありえるのだろうか?どうやってわたしのことを知ったのだろう、考えられる答えはひとつ、昨日のバス会社の人がこの一家ネルソン宅に連絡、そして到着時間と名前を知らせた、しかし何で日本語、お嬢さんはなんと今日二人目ハバナ大学日本語学科卒の才媛だったのだ、まったく予想もしなかった奇跡的出来事に狐につままれた思いでタクシーに乗って彼らの家に向かった、しかしその暗い夜道はもし彼らが出迎えてくれなかったらたとえタクシーを使ったとしても一人ではたどり着けなかったかもしれなかった、そこはまったく普通の民家だったし目印になるようなものは何もなかった、言葉の問題もあった、そういうことを予測して出迎えてくれたとすると、これまでに何度も経験したキューバ人のホスピタリティというかその気遣い・親切は並大抵のものでないことがあらためて実感された、そのひとつの頂点がここにあった、ゆえに恐るべしキューバ人!!である