独歩の独り世界・旅世界

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<炎天下のお遍路失敗に帰す> 二日目 石鎚山

 よく眠れて、早起きし7:00に朝食、8:00にチェックアウト、二日目8月29日も順調にスタートした、しかしこの日も朝から暑かった。

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古岩屋荘全景

 この日はいわゆるお遍路ルートでなく、ちょっと変わったコースを予定していた。が、結果的にはやはり無謀だったかもしれなかった。何度も言っているがわたしの四国通いも5年目に入っていた。すべてお遍路が主目的だったが、今回はこの日だけ少々無理かもしれない計画を立てていた。いや、それが5年前だったら決して無謀とは言えなかったと思う。そのころはまだ半分くらいは歩いていたし、遍路ころがしといわれている難所もすべて歩いて登っていた。だから今回予定した四国の最高峰・石鎚山(1970m)の登山も、ある意味楽勝だったはずなのだ。しかし体力の衰えはこの2,3年急に顕著になっていた。そう、70過ぎてからである。ま、それは日ごろの運動不足、トレーニング嫌いの結果でもあったのだが、実際1000m以上の山、正確にいうと3時間以上の山歩きはきつくなっていた(なので出かける機会も極端に減っていた)。だからもう山登りはあきらめていたのだが、今回生涯最後の山登りとして石鎚に挑戦してみる気になったのだった。ひとつにはルートを調べてみて、バスでかなり上まで行けるのでそれほど高低差はないことがわかったこと、登り3時間くらいの初心者コースらしいことを知ったからで、行けるかも?と賭けてみる気になったのであった。もちろん一応山の経験者だったから、持ち物等について、あるいは緊急時の心構え等は怠りなかったと思う。問題は体力が持つかどうかだけであった。石鎚山の登山口である土小屋(H1500m)まで行くバスは土日しかなくて、それも一日二本、それに乗るための古岩屋荘泊でもあったのだ。久万高原発8:10 古岩屋荘発8:23のバスは終点の土小屋に5分早く9:45に着いた(登山者は3人くらいいた)。途中バスから見えた石鎚の山容は感動的ですらあった。バスからだったのでその偉容を写すことができなかったのだが、結局後からそれを上回るフォトスポットを見出すことができなかったのが、返す返すも悔やまれた。

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面河山岳博物館

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土小屋付近

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石鎚神社土小屋遥拝殿

 土小屋にある石鎚神社参拝殿に詣でて歩き出したのが10時少し前、最初は傾斜もなだらかで、往年の足取りは無理にしても、それほど追い越されることもなく30分ごとの休憩で何とか距離を稼いでいた。が、1時間を過ぎるあたりから、少し傾斜がついてきてどんどん後続から抜かれていく。驚いたのは結構登山者が多かったこと、ほとんど若者でみんな素人っぽい、家族連れやカップル、あるいは女性の単独行なども結構いたのだ。1時間半くらいたったあたりから、しんどくなり始めて遅々とした歩みになる、それでもどうにか2時間少々で1800m地点、西条からのルートとの合流点に到着した。12時少し回ったところだった。

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最初はなだらな遊歩道といった感じ

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進行右手、北側の展望よし、天気もこのころは快晴だったのだが‥

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歩き出して30分くらい、ここが石鎚山が見えた最後となる

 ま、そこまでくれば一安心、予定通りそこから西条ルートを下れば2時間くらいでロープウェー乗り場に行きつけそうだったからだ。しかし問題は頂上はどうするかであった。わたし以外の登山者は、そこまでくれば誰も躊躇うことなく、そこから1時間の頂上を目指して軽々と登っていった。中には小学生くらいの子供もいたが、元気があれば子供でも楽に行けたと思う。しかし、わたしはすでにその元気がなかった。そんなことしている人はいなかったが、多少の休憩の後わたしはそこに荷物をデポして(6~7kgの荷物さえ、重くなっていたのだ)一応頂上に向かってみた。そこからは傾斜がとんでもなくきつくなったが、ほとんど階段状の(鉄製)ステップが作られていて体力のある人には比較的簡単な登りだったと思う(その間は有名な鎖場も何ヶ所かあったが、そこを登っている人は少なかった)。頂上までの標高差は200m、行けるところまでいってみるつもりで取りついたが、15分50mくらい登ったところで断念した、息が続かない、足も上がらない、フラフラな状態だった。もう一つの決め手は天気だった。土小屋は晴れていたが途中から曇ってきて、合流地点から頂上に向かったときはいつ降り出してもおかしくない空模様となっていたのだ。

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合流地点の小屋

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二の鎖の上部あたり、頂上が見えたがすぐにガスがかかって見えなくなる

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しばらく様子を見ていたが、ガス後濃くなってきたので頂上も狙わず下山を決意、その20分後くらいに雨が降り出した

 荷物をデポしたところまで戻り、小休憩後ザックカバーをかけて下りに移った。その時はすでに13時に近かった。下りは快調かと思っていたが、疲れでそんなに順調でもなかった。そのうち雨が降り出し、その雨も本格的な雨から、半端でない土砂降りとなり、もはや雨具が用をなさないほどになった。濡れ鼠を覚悟し土砂降りの中よぼよぼと下っていく。後続にどんどん抜かれる。そのうち眼に異変が生じた。雨が眼に入り痛くて眼が開けていられなくなった。こんなことは初めての経験で、対処のしようがなく雨の中立ち止まるというか、登山道の真ん中で座り込むしかなかった。理由を考えたが、半年くらい前から眼医者に通っていて目薬を点眼していたのだけれど、もしかしたらそれが原因だったのか今もってわからないでいる。いずれにしろ土砂降りの雨の中濡れ鼠で登山道に座り込んでしまっている登山者(わたし)を目撃して、下ってくる人たちみんなが声をかけてくれた。'大丈夫ですか?' '救援を呼びましょうか?' と。動けなかったが、それほどのことでもないだろうと思って、'大丈夫です。しばらく休んでいきますので、心配に及びません'と、その親切に感謝した。実際少し休むと、痛みはとれて眼を開けることができた。気を取り直して歩きだす、また、痛み出し眼を開けていられないから立ち止まって休む、その繰り返しでなんとか途中の石鎚神社成就社というところに、普通の人なら1時間で下るところを2時間くらいかかってようやくたどり着いた。そこからロープウエー乗り場まではまだ2~30分あるとのことだったが、近くにリフトがあってそれが動いているという話を聞いたので、そこまで10分くらい歩いてリフトも使う。それで最終17時と聞いていたロープウェー(00分、20分、40分発)の16:00発に乗ることができ、頂上制覇はできなかったが、何とか無事生還することができたのだった。上のロープウエー乗り場(1300m)では、小降りになったとはいえまだ雨模様だったが、ロープウエーが下るにつれてみるみる晴れてきたのには驚かされた。(わたしは無理だったけど参考までに一般の人のコースタイムを記しておくと、土小屋ルートは土小屋~頂上間、登り2.5~3h 下り2h~2.5h、西条ルートはロープウェー乗り場~頂上間、登り3.5h 下り2.5h? わたしも若かったら、そのくらいの時間で十分往復できたと思う、負け惜しみだが・・) 

下のロープウェー駅から西条駅行の最終バスは17:23で1時間ほど余裕があった。無料の休憩所があったので、そこでまず着ていたものを全部脱いで着替えをし、バス到着までゆっくり休むことができた。西条駅着は18:45、予約していた駅前のホテルに19時ころチェックインする。初めて泊まるそのビジネスホテルは、すでにgo toトラベル利用で予約してあったので宿泊費はなんと1400円で済んだ。おまけに洗濯はお接待とのことだったので、濡れたものをすべて洗濯することができ、近くにあったコインランドリーですべて乾燥させることもできた。その近くにはローソンがあったので、夕食&酒を仕入れ風呂に入ってからのビールの一杯(ロング缶)で疲れも吹っ飛ぶのであった。